【食料安保】遅きに失した備蓄米買い入れ再開、国家の礎を揺るがすな
農林水産省が2年ぶりに備蓄米の買い入れ入札を再開すると発表した。このニュースを、単なる米価対策や需給調整の話として捉えてはならない。これは、我が国の食料安全保障、ひいては国家の存立基盤そのものに関わる重要な問題である。
今回の決定は、一歩前進として評価すべきだろう。ウクライナ危機による国際的な穀物価格の高騰、世界各地で頻発する異常気象、そして台湾有事をはじめとする地政学的リスクの高まり。これらを取り巻く国際情勢を鑑みれば、国民の主食である米の備蓄を強化することは、国家として当然の責務である。むしろ、この2年間もの間、安定的な買い入れを停止していたこと自体が、政府の危機意識の欠如を露呈していると言わざるを得ない。
そもそも食料備蓄とは、平時においてこそ着々と進めるべき国家の最重要課題である。市場価格の変動を理由に買い入れを停止するなど、本末転倒も甚だしい。国民の生命線を市場原理に委ねるがごとき発想は、国家の危機管理として到底容認できるものではない。この2年間の空白が、我が国の食料安全保障体制に脆弱性を生じさせなかったか、政府は猛省し、国民に対して明確な説明責任を果たすべきである。
さらに、今回の買い入れは、国内の米農家を守るという重要な側面も持つ。米価の下支えは、生産者の経営を安定させ、ひいては日本の稲作文化と、その担い手である農村共同体を維持することに繋がる。食料を安易に海外からの輸入に頼る風潮が蔓延る中、国内の生産基盤を守り、食料自給率の向上を目指すことこそ、真の国益に資する道である。
しかし、忘れてはならないのは、備蓄米の買い入れはあくまで対症療法に過ぎないという事実だ。我が国が直面している根本的な問題は、4割に満たない危険な水準の食料自給率と、後継者不足や耕作放棄地の増大といった、農業そのものの構造的な衰退である。
政府は目先の備蓄量に一喜一憂するのではなく、この問題を直視し、農業を国家百年の計として再興させるための、長期的かつ強力なビジョンを提示せねばならない。減反政策のあり方を含め、生産者が誇りと意欲を持って米作りに励めるような、抜本的な農業政策への転換が急務だ。
今回の備蓄米買い入れ再開を、単なる一時的な措置で終わらせてはならない。これを、我が国の食料安全保障体制を根本から再構築する契機としなければならない。食は国家の礎である。政府、そして我々国民一人ひとりがその原点を再認識し、いかなる事態にも揺るがない、強固な食料自給体制の確立に向けて、覚悟を新たにすべき時である。
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