現状の課題
カスタマーハラスメントは、私たちの地域社会に以下のような深刻な影響を及ぼしています。
働く人々の心身への深刻なダメージ
従業員が過度なストレスや精神的苦痛を感じ、うつ病などの精神疾患を発症したり、退職に追い込まれたりするケースが増えています。これにより、人材が定着せず、地域から働き手が失われる原因となります。
事業者(お店など)の経営圧迫とサービス品質の低下
ハラスメント対応に多くの時間と労力が割かれることで、通常業務が滞ります。また、従業員が安心して働けない環境では、本来提供できるはずの質の高いサービスも提供できなくなり、結果的に他のお客様全員が不利益を被ることになります。
「ハラスメントは許される」という誤った風潮
悪質な要求が通ってしまう成功体験は、さらなるハラスメントを助長します。また、SNSによる動画の拡散などは、模倣犯を生み出し、地域全体の治安やモラルの低下につながる恐れがあります。
提案する解決策
これらの課題を解決するため、八潮市として以下の対策を総合的に推進します。
提案1: 「八潮市カスタマーハラスメント防止条例(仮称)」の制定
他の自治体の先進事例(東京都など)も参考に、カスハラを許さない街の姿勢を明確にするための条例を制定します。
- カスハラの定義の明確化: 何が「正当な要求」で、何が「許されないハラスメント行為」なのかを具体的に定めます。
- 市・事業者・市民の責務: 市は啓発や相談体制の整備、事業者は従業員を守る体制づくり、市民は互いを尊重し迷惑行為を行わない、といったそれぞれの役割を明記します。
- 禁止行為の明示: 暴言、威嚇、長時間の拘束、不当な金銭要求、SNSでの晒し行為などを明確に禁止します。
提案2: 事業者向け「カスハラ対応ガイドライン」の作成と研修の実施
事業者が一人で悩まず、自信を持って対応できるよう、実践的な手引書を作成・配布します。
- 対応マニュアルの提供: ハラスメント発生時の初期対応から、警告、退去要求、警察への通報までの具体的な手順を分かりやすく示します。
- 店内掲示用ポスターの配布: 「当市(店)はカスハラに対して毅然と対応します」「従業員を守ることは、お客様へのサービスを守ることです」といったポスターを提供し、ハラスメントを未然に防ぎます。
- 従業員向け研修の実施: 対応方法を学ぶ研修会や、弁護士などの専門家による相談会を実施します。
提案3: 警察・弁護士会などとの連携による相談・支援体制の強化
市役所に事業者や従業員が気軽に相談できる専門窓口を設置します。
- ワンストップ相談窓口: 被害に遭った事業者が、今後の対応(警察への相談、法的措置など)を一度に相談できる窓口を設けます。
- 警察との連携強化: 威力業務妨害罪、脅迫罪、不退去罪など、犯罪に該当する行為については、速やかに警察へ通報・相談できるホットラインを構築します。事業者向けに「警察への上手な通報の仕方」セミナーなども開催します。
- 法的支援: 弁護士会と連携し、悪質なケースに対して法的措置を検討する事業者への法律相談サポートを行います。
提案4: 市民全体への啓発キャンペーン
市の広報誌、ウェブサイト、SNSなどを通じて、「カスハラは社会全体の問題である」という意識を市民の皆様と共有します。
- スローガンの発信: 「働く人へのリスペクトが、街の品格をつくる。」といったメッセージを発信し、市民全体の理解と協力を求めます。
- 感謝の表明: 適正なサービスや労働に感謝する文化を醸成し、ポジティブな側面からもアプローチします。
期待される効果
従業員が安心して働ける環境の実現
「市や会社が守ってくれる」という安心感が、従業員の定着率を高め、働く意欲を向上させます。これにより、八潮市が「働きやすい街」としての魅力を高めます。
事業者が毅然と対応できる基盤の構築
条例やガイドラインという後ろ盾を得ることで、事業者は不当な要求に対して「NO」と言えるようになります。これにより、理不尽な要求に屈することなく、健全な事業活動を守ることができます。
「カスハラは八潮市では通用しない」という社会的風潮の醸成
市全体で取り組むことで、「この街では迷惑行為は許されない」という空気が生まれます。これにより、ハラスメント行為そのものが減少し、悪質なクレーマーが孤立する社会を目指します。
市民全体のサービス品質向上と地域経済の活性化
従業員が疲弊することなく、本来の業務に集中できることで、市民一人ひとりへのサービス品質が向上します。安心して働けるお店や事業所が増えることは、地域経済全体の活性化にも繋がります。