自民党、連立拡大論の危うさ ― 保守の理念を捨て、数合わせに走るのか?
自民党の鈴木馨祐幹事長代理が、次期衆院選の結果次第で国民民主党や日本維新の会との連立政権に言及したとの報道に、多くの保守支持者は深い憂慮を禁じ得なかったのではないだろうか。岸田政権の支持率が低迷し、自公だけでは過半数維持が困難との見方が広がる中、一見すると現実的な戦術のように聞こえるかもしれない。しかし、この発言の裏に透けて見えるのは、国家の将来を見据えた深謀遠慮ではなく、目先の議席確保と政権維持に汲々とする「数合わせ」の論理であり、保守政党としての矜持を忘れた姿である。
政権延命のための「野合」は許されない
そもそも、なぜ今、連立拡大なのか。その動機は明らかであろう。それは、岸田政権が国民の信頼を失い、単独では政権を維持できないという危機感に他ならない。しかし、選挙で国民の信を失ったのであれば、野に下るのが議会制民主主義の常道である。それを、政策も理念も異なる政党と安易に手を組むことで回避しようとするならば、それは国民への裏切りであり、責任政党としての役割の放棄だ。
政治の安定は確かに重要である。だが、その安定が、理念なき妥協の産物であってはならない。国家の進むべき道を明確に示し、その実現のために邁進するのが保守政党の使命ではなかったか。支持率の低下という党の都合で、その使命を投げ打つような発想は、断じて許されるものではない。
「呉越同舟」がもたらす国政の混乱
仮に、国民民主党や日本維新の会との連立が実現したとしよう。そこに待ち受けるのは、政策の迷走と国政の混乱である。
国民民主党は、その支持基盤に労働組合「連合」を抱えている。自由主義経済を重んじ、行き過ぎた労働規制の緩和を是とする自民党の保守本流とは、経済政策、労働政策において根本的に相容れない部分が多い。また、エネルギー政策においても、国民民主党内には脱原発への志向が根強く残っており、安定的なエネルギー供給と安全保障を重視する我々の立場とは隔たりが大きい。このような「呉越同舟」の政権が、一体どのような一貫した政策を打ち出せるというのだろうか。
日本維新の会も同様だ。「身を切る改革」というスローガンは耳障りが良いが、その急進的な改革手法や、時にポピュリズムに傾く政治姿勢は、伝統と秩序を重んじ、漸進的な改革を志向する保守の道とは異なる。安全保障政策などで一部共通点を見出せたとしても、国家の根幹に関わる統治機構や財政規律に対する考え方の違いは大きい。異なる理念を持つ政党が連立を組めば、待っているのは互いの足を引っ張り合うだけの不毛な権力闘争であり、その犠牲となるのは国民である。
自民党が今、為すべきこと
我々が自民党に期待するのは、他党に秋波を送り、政権の延命を図る姑息な延命策ではない。今こそ、自由民主党が立党以来掲げてきた保守の理念に立ち返り、その政策を磨き上げ、国民に対して正々堂々と信を問う覚悟である。
憲法改正、毅然とした外交・安全保障政策、そして持続可能な経済成長と財政再建。これらの我が国の根幹をなす課題に対し、明確なビジョンを国民に示し、理解を求める努力を尽くすことこそ、政権与党の責務だ。目先の選挙の損得勘定で政策を曲げ、理念の異なる勢力と手を組むことは、結果的に自らの存在意義を失わせ、長年にわたり自民党を支えてきた支持者の信頼を失うことに繋がるだろう。
鈴木幹事長代理の発言は、党中枢の危機感の表れなのかもしれない。しかし、その処方箋は完全に間違っている。必要なのは、連立の枠を広げることではない。自らの襟を正し、保守政党としての原点に立ち返ることである。その覚悟なくして、国民の信頼回復も、日本の輝かしい未来もあり得ない。
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