連立の信義はどこへ?公明党の独自候補擁立が示す「自民党への最後通牒」
統一地方選挙に向け、公明党が自民党候補を推薦してきた選挙区、特に首都・東京において独自候補の擁立に踏み切るという。一見、地方選挙における一政党の戦術変更に過ぎないように見えるこの動きは、しかし、我が国の政治の根幹を揺るがしかねない、極めて深刻な兆候をはらんでいる。これは単なる党勢拡大を狙った動きではなく、自民党への不信感の表明であり、自公連立という安定基盤に対する「最後通牒」と受け止めるべきだ。
「持ちつ持たれつ」を忘れたご都合主義
そもそも、自公連立政権とは、互いの選挙協力を基盤として成り立ってきた。国政選挙において、自民党候補は公明党と、その支持母体である創価学会の強力な組織票に支えられ、幾度となく激戦を制してきた。その見返りとして、自民党は公明党が議席を持つ選挙区で候補者を立てず、推薦に回る。この「持ちつ持たれつ」の関係こそが、政権の安定を担保してきた信義の根幹であったはずだ。
しかし、今、公明党が取ろうとしている行動は、この信義を一方的に踏みにじるものと言わざるを得ない。自民党が政治資金問題で逆風にさらされ、支持率が低迷するや否や、掌を返して「一蓮托生はごめんだ」とばかりに距離を置き、あまつさえ自民党の議席を奪いに来る。苦しい時こそ支え合うのが連立の精神ではないのか。自党の利益のみを優先し、長年のパートナーを切り捨てるかのような姿勢は、まさにご都合主義であり、政治的な信義にもとる行為であると断じざるを得ない。
国益を損なう内なる揺さぶり
我々が最も懸念すべきは、この動きがもたらす政治の不安定化である。現在の日本を取り巻く国際情勢は、予断を許さない。北朝鮮のミサイル発射、中国の覇権主義的行動、ロシアによるウクライナ侵攻など、安全保障上の脅威は日増しに高まっている。このような国難ともいえる時期に、我が国は安定した政治基盤のもと、憲法改正の議論を含めた防衛力の抜本的強化や、毅然とした外交政策を推し進めなければならない。
その重要な局面において、与党内で不協和音が生じ、足元の連携が崩れることは、国益を著しく損なう。公明党の今回の動きは、単なる地方選挙の枠を超え、来る国政選挙、そして憲法改正をはじめとする重要政策課題に対する自民党への強力な牽制であることは明らかだ。自らの存在感を誇示するために、国家の重要課題を政争の具とするならば、それは与党としての責任放棄に他ならない。
猛省すべきは自民党自身である
だが、我々は公明党のみを一方的に批判して思考停止に陥ってはならない。彼らにこのような行動を決断させた最大の原因は、自民党自身の体たらくにあることを直視すべきだ。
長年にわたる政治資金問題の膿を出し切れず、国民の政治不信を増幅させた責任は極めて重い。派閥の論理を優先し、国家国民のための政策論争を疎かにしてきた。岸田政権の指導力は揺らぎ、保守本流たる自民党が、国家の将来像を明確に指し示すことができずにいる。この現状が、連立パートナーである公明党に「自民党と心中するわけにはいかない」という危機感を抱かせ、離反の動きを加速させているのだ。
いわば、公明党の独自候補擁立は、弛緩しきった自民党に突き付けられた刃である。この警告を真摯に受け止め、猛省し、党の抜本的な改革と自己浄化を断行できなければ、自民党は国民だけでなく、連立パートナーからの信頼さえも完全に失うことになるだろう。
今回の公明党の動きは、自公連立の終わりの始まりとなる危険な兆候だ。しかし、これを自民党が生まれ変わるための「最後の好機」と捉えることもできる。自民党は、小手先の選挙戦術でこの場を凌ぐのではなく、保守政党としての矜持を取り戻し、国民と国家のために何をなすべきかを改めて問い直さなければならない。安定した政治基盤の再構築は、そこからしか始まらないのである。
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