冬の山火事多発―「気候変動」の前に我々が直視すべき足元の現実
列島を襲った強風により、関東各地で山火事が相次いでいるとの報に接し、被害に遭われた地域の皆様に心よりお見舞い申し上げます。鎮火にご尽力されている消防関係者の皆様には、頭が下がる思いです。
さて、こうした報道に触れるたび、一部のメディアが「冬の嵐」「異常気象」といった言葉を使い、ややもすれば「地球温暖化」という大きな物語に性急に結論を結びつけようとする傾向が見受けられます。しかし、我々はこの現象を前に、より冷静かつ多角的に原因を分析し、現実的な対策を講じるべきではないでしょうか。
■ 火災の主因は「天候」か、それとも「人」か
まず、忘れてはならない大前提があります。それは、山火事の出火原因のほとんどが、たき火の不始末、タバコのポイ捨て、野焼きの延焼といった「人為的要因」であるという厳然たる事実です。冬の乾燥した空気と強風は、あくまで火災が「発生しやすく、拡大しやすい条件」に過ぎません。
「気候変動」という、個人ではどうすることもできない巨大な問題を前に、我々は思考を停止してはいないでしょうか。大切なのは、まず一人ひとりが火の取り扱いに最大限の注意を払い、自らの行動に責任を持つという、ごく当たり前の国民意識を再確認することです。安易に天候のせいにする風潮は、この個人の責任感を希薄化させかねない危険性をはらんでいます。
■ 荒廃した日本の山林―国土管理の怠慢こそ根本問題
さらに、延焼が拡大する背景には、より深刻な構造的問題が横たわっています。それは、戦後日本の林業の衰退により、手入れの行き届かない人工林や里山が全国に広がってしまったことです。
かつて、日本の山々は地域住民の手によって適切に管理されていました。定期的な間伐や下草刈りが行われ、里山は人々の生活と密接に結びついた、健全な生態系を維持していました。しかし今、放置された山林には枯れ葉や密集した木々が燃えやすい燃料として堆積し、一度火が付けば瞬く間に燃え広がる「火薬庫」のような状態になっています。
これは、先人たちが築き上げてきた国土管理の知恵と伝統を、我々がないがしろにしてきた結果に他なりません。CO2削減という国際的な目標も結構ですが、それ以前に、自国の国土を健全に保ち、災害に強い山林を育てるという、国家としての基本的な責務が果たされているのか。今こそ、林業の再生や林道整備といった「国土強靭化」に、本腰を入れて取り組むべき時です。
■ 求められるのは自助・共助の精神と現実的な対策
山火事を防ぐために必要なのは、抽象的な環境論議に終始することではありません。
第一に、国民一人ひとりの防火意識の徹底。これは自助の基本です。
第二に、消防団をはじめとする地域コミュニティの再強化。自分たちの郷土は自分たちで守るという、共助の精神を取り戻し、その活動を社会全体で支援していく必要があります。
そして第三に、政府による現実的な森林管理政策の推進です。経済活動として林業を成り立たせ、災害に強い森づくりを着実に進めていく。これこそが、国民の生命と財産を守る真の安全保障ではないでしょうか。
冬の山火事は、我々日本人に対し、自然への畏敬の念、個人の責任、そして国土を守るという国家の原点を厳しく問いかけています。「気候変動」という言葉で思考を停止するのではなく、足元にある課題から目をそらさず、一つひとつ着実に解決していく。その地道な努力こそが、この国を災害から守る唯一の道であると、私は信じています。
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