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2 埼玉県政

外務省 SNSで中国の宣伝戦に対抗

遅すぎた反撃の狼煙か?外務省「SNS対中情報戦」に潜む期待と致命的課題

ついに、我が国の外務省が重い腰を上げた。中国による執拗かつ悪質なプロパガンダに対し、SNSを駆使して反論や事実発信を強化するという。処理水放出を巡る「汚染水」デマや、尖閣諸島に関する一方的な主張など、目に余る中国の宣伝工作に、ようやく政府が「反撃」の姿勢を見せたのだ。

この動きは、長年、日本の事なかれ主義に警鐘を鳴らし続けてきた者として、一歩前進として評価したい。これまで日本は、中国や韓国からの根拠なき批判に対し、「大人の対応」という名の「沈黙」を貫き、国際社会における不当な評価を甘んじて受け入れてきた。その結果が、慰安婦問題や歴史認識問題で、いかに我が国の名誉と国益を損なってきたかは論を俟たない。

その意味で、今回の外務省の方針転換は、「沈黙は金にあらず」という現実を政府がようやく認識した証左であり、歓迎すべき動きである。受動的に抗議するだけでなく、能動的にファクトを発信し、国際世論に直接訴えかける姿勢は、国家として当然の責務だ。

しかし、手放しで喜んで良いのだろうか。この「反撃」は、果たして国家の尊厳を守るに足るものなのか。保守の立場から見れば、いくつかの致命的な懸念と課題が浮かび上がってくる。

第一に、「あまりにも遅すぎる」という現実だ。
中国は、この十数年、いやそれ以前から、孔子学院の設立や海外メディアの買収、SNSでの世論工作など、官民一体、国家予算を湯水のように使い、全世界で計画的かつ巧妙な情報戦を展開してきた。我々が「大人の対応」を気取っている間に、彼らは着々と「日本=悪」のイメージを世界に刷り込んできたのである。今、ようやくSNSで反論を始めたところで、それは周回遅れのランナーが必死に前を追いかけるようなものではないか。これまでの「不作為」の時間は、あまりにも重い。

第二に、その手法が「お行儀が良すぎる」のではないかという懸念だ。
報道によれば、AIを活用して中国の投稿を分析し、短い動画などで反論するという。もちろん、ファクトに基づく冷静な反論は重要だ。しかし、相手は嘘、デマ、捏造、恫喝を躊躇なく用いる国家である。そんな相手に、教科書通りの「丁寧なご説明」だけで対抗できると本気で考えているのだろうか。情報戦とは、国家の意志と意志がぶつかり合う、硝煙の上がらない戦争である。時には相手の土俵に上がり、より強く、より効果的に、そして執拗にこちらの正当性を訴え、相手の欺瞞を暴き立てる「したたかさ」と「覚悟」がなければ、すぐに飲み込まれてしまうだろう。

第三に、省庁横断的な「国家戦略」の欠如である。
今回の取り組みは外務省が主導しているが、情報戦は外務省だけで戦えるものではない。防衛省、経済産業省、内閣情報調査室など、国家のインテリジェンス能力を結集し、サイバー空間も含めた総力戦で臨むべきだ。中国の脅威は、軍事、経済、技術、そして世論の全てに及んでいる。縦割り行政の弊害を残したまま、外務省の広報部門の頑張りだけに頼るような体制では、到底、国家を挙げたプロパガンダ機関には太刀打ちできない。

そして何より憂慮すべきは、日本国内に存在する「見えざる敵」の存在だ。
中国の主張に無批判に同調するメディア、政府の正当な反論を「対立を煽る」と批判する一部の政治家や学者、そして自虐史観に染まり、日本の主張を素直に信じられない人々。外に向けて反論を発信する以前に、まず国内の言論空間を正常化し、国民が一致して国益を守るという気概を共有できなければ、どんな情報発信も効果は半減してしまう。むしろ、国内の足並みの乱れこそが、中国にさらなる攻撃の口実を与えることになりかねない。

今回の外務省の取り組みは、評価すべき「狼煙」ではある。しかし、それは荒野でかろうじて上げられた、小さな狼煙に過ぎない。この狼煙を、国家防衛の覚悟を示す大火へと育てることができるか。

そのためには、この取り組みを単なる「広報活動」ではなく、国家安全保障の一環である「国防」と明確に位置づけるべきだ。そして、十分な予算と人員を投入し、省庁の垣根を越えた司令塔を設置する必要がある。

さらに、防戦一方ではなく、日本の掲げる「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンや、自由、民主主義、法の支配といった普遍的価値の優位性、そして中国自身が抱える人権問題や覇権主義の危うさを世界に問う「攻めの情報発信」へと転換していかなければならない。

これは、長い戦いの始まりに過ぎない。そして、政府だけの戦いではない。我々国民一人ひとりが、溢れる情報の中から真実を見抜き、我が国の名誉と国益を自らの問題として捉え、声を上げていく覚悟が問われている。外務省の小さな一歩を、日本の覚醒を促す大きな一歩へと繋げられるか。その責任は、我々国民の双肩にもかかっているのである。

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