やしお市議会だより(令和7年8月)に記載されている令和7年第2回定例会の一般質問の内容にもとづき、僭越ながら16名の議員の質問能力をA~Dで評価させていただきました。以下、敬称略とさせていただきます。
A評価:市から有効な回答を引き出し、市政を動かす力を持つ議員
- 特徴: 具体的で本質を突く質問により、市の消極的な姿勢を打破し、政策の変更や重要な事実の引き出しに成功している。市民の利益に直接つながる成果を出している。
- 該当議員とコメント:
- 大泉 芳行:下水道管破損による道路陥没事故について
- コメント: 事故の事実から、市民の安全・費用負担・行政連携という多角的な視点で核心を突いた、非常に優れた質問でした。特に「復旧費用が八潮市民の使用料に影響するのか」という問いは、市民が最も不安に感じる点を代弁しており、今後の市と県との協議における市の姿勢を明確に問うことができました。
- 鈴木 貞夫:市債の返済方法の見直し
- コメント: 市の財政運営という難解なテーマを、市民に分かりやすい具体的な提案に落とし込んだ、模範的な質問でした。これにより、市は「既に令和5年度より採用している」という、政策変更の事実と具体的な数字を回答せざるを得ませんでした。議員の質問が実際に市政を動かし、市民の税金がより効率的に使われるきっかけとなった、最高の事例です。
- 朝田 和宏:道路陥没事故の初動対応
- コメント: 事故の初動対応という、市の危機管理能力の根幹を問う、非常に鋭い質問でした。「どのような体制で対応、協議していたのか」という問いかけによって、市は初動対応の具体的プロセスを説明せざるを得ず、「一般的な道路陥没事故として対応していた」という危機意識の甘さを露呈する結果となりました。これは、今後の危機管理体制見直しのための貴重な材料となりました。
- 大島 愛音:災害時のLPガス供給
- コメント: 市民の生命に関わる危機管理に対し、既存の協定の問題点を指摘し、「二重のセーフティーネット」という具体的かつ現実的な解決策を提案した、模範的な質問でした。市の回答は「申し出があったら検討」という受け身なものでしたが、この質問によって、市民の安全確保に対する市の姿勢の不十分さが明確に浮き彫りになりました。
- 池谷 正:潮止橋南詰のバス停付近の安全対策
- コメント: 市民が日頃感じる「ヒヤリ」とする具体的な危険を指摘し、その解決策として「信号機の設置」を明確に提案した、非常に優れた質問でした。市は「原則150mの距離が必要で難しい」と回答しましたが、この質問によって、市が市民の安全を原則論で片付けている現状が明らかになりました。
- 大泉 芳行:下水道管破損による道路陥没事故について
B評価:鋭い視点を持つが、市の受け身な姿勢を動かすには至らなかった議員
- 特徴: 質問のテーマ設定や内容、提案は優れているが、市の「検討します」「今後対応します」といった消極的な回答に留まってしまった。質問の持つ力を十分に引き出しきれなかった。
- 該当議員とコメント:
- 篠原 亮太:不法投棄について
- コメント: 単なる警告ではなく、「逮捕」という明確な目的を掲げ、そのための手段として「協議会の設立」という具体的な提案をした、意欲的な質問でした。しかし、市の回答は「まず警察と相談」という、行動を先延ばしにするものに留まり、議員の強い問題意識を市政の具体的な行動に結びつけるには至りませんでした。
- 前原 鮎美:男女共同参画社会について
- コメント: フェムテックという先進的なテーマを取り上げ、国や経済産業省の動向を引用することで説得力を持たせました。しかし、市の回答は「調査・検討していく」という、典型的な「これから考えます」というもので、具体的な行動を引き出すことはできませんでした。
- 岡部 一正:道路陥没事故について
- コメント: 住民説明会で多くの意見があった「臭気」という、市民の切実な生活不安に焦点を当てた、市民目線に立った良い質問でした。しかし、市の回答は既存の情報提供方法を羅列するだけで、不満の声が上がっている現状をどう改善するかという点には触れておらず、市の消極的な姿勢を浮き彫りにする結果となりました。
- 荒川 貴洋:要介護認定審査について
- コメント: 市民の生活に直結する重要な課題であり、国が改善を求めている点に着目した良い質問でした。しかし、「取り組みについて」という問いかけが抽象的だったため、市は「努めています」「検討します」という現状維持の回答に終始しました。
- 小宮 弘子:学校給食について
- コメント: 大規模事業の審議の透明性と用地選定の妥当性という、プロセスを問うた良い質問でした。市は他市の事例や候補地を具体的に回答しており、比較的透明な情報開示につながりました。ただし、質問から市のより深い判断基準を引き出すには至りませんでした。
- 金子 壮一:産業道路の延伸について
- コメント: 八潮市の将来の交通網と発展を見据えた、非常に建設的で広域的な視点を持つ質問でした。しかし、市の回答は「協議・連携は重要」「課題の整理を行う必要がある」という現状認識に留まり、具体的な協議の進捗や、市が主体的に動いているという姿勢は引き出せませんでした。
- 篠原 亮太:不法投棄について
C評価:テーマは良いが、質問の抽象性から、市の有効な回答を引き出せなかった議員
- 特徴: 市民にとって重要なテーマを選んでいるものの、質問が漠然としすぎているため、市に現状の説明や当たり障りのない回答を許してしまった。
- 該当議員とコメント:
- 鹿野 泰司:物価高騰対策について
- コメント: 市民の生活不安を代弁するテーマは良いのですが、「検討状況」という漠然とした質問だったため、市は国の通知を羅列し、「庁内で対象事業の選定を行っている」と答えるだけで済みました。
- 二木 和枝:公共施設における授乳室の環境整備について
- コメント: 子育て世代に寄り添う良いテーマでしたが、「環境整備」という漠然とした問いかけだったため、市は「改修の機会を捉えて進める」という、具体的な計画性のない回答を許してしまいました。
- 内田 亜希子:下水道について
- コメント: 大事故をきっかけに市のインフラ管理を問うた点は良いのですが、「現状とこれから」という漠然とした問いかけでした。このため、市は「下水道ストックマネジメント計画」を説明するだけで済み、市の受け身な姿勢を回答から引き出す結果となりました。
- 川井 貴志:各公共施設の修繕費用の計画について
- コメント: 地域課題に焦点を当てた点は良いのですが、「お考えをお聞かせください」という抽象的な質問で、市の具体的な方針を引き出すことは難しいものでした。
- 鹿野 泰司:物価高騰対策について
D評価:質問能力に大きな課題があり、市民に資する議論に繋がらなかった議員
- 特徴: 問題提起が不明確であったり、提案が問題の規模に見合っていなかったりするため、市民に資する議論に繋がっていない。
- 該当議員とコメント:
- 小倉 聖彦:魅力ある八潮市を目指して
- コメント: 大きな理想である「魅力ある八潮市」を掲げる一方で、提案が「プランターへの花植え」と非常に限定的でした。このミスマッチが、市の「年に1、2回実施している」という現状維持の回答を招き、市民に資する議論に繋がりませんでした。
- 小倉 聖彦:魅力ある八潮市を目指して
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