国会から逃げる政府と、政局に走る野党。国益を置き去りにする政治の惨状
またしても、国政の停滞を告げるニュースが飛び込んできた。政府・与党が、10月15日の臨時国会召集を断念したという。物価高と円安は国民生活を直撃し、台湾海峡をめぐる緊張は日に日に高まっている。このような国難とも言うべき状況下で、立法府の機能を停止させる判断がなぜ下されるのか。断じて容認できるものではない。
今回の召集断念の背景には、旧統一教会問題を巡る野党の追及をかわしたいという政府の思惑が透けて見える。確かに、問題が次々と明らかになる中で、厳しい追及が予想される国会審議を避けたいという気持ちは理解できなくもない。しかし、それは為政者としてあるまじき「逃げ」の姿勢であり、国家のリーダーシップを自ら放棄するに等しい行為だ。
岸田政権は、防衛力の抜本的強化や、物価高に対応する大型の経済対策など、重要課題を掲げているはずだ。それならば、野党の追及を恐れることなく、国会の場で堂々と政策の正当性を訴え、国民の信を問うべきではないか。説明責任から逃げ、時間稼ぎに終始するような弱腰な政権に、この国の舵取りを任せることはできない。重要政策の決定が遅れれば遅れるほど、そのツケはすべて国民に回ってくることを肝に銘じるべきである。
一方で、野党の責任も極めて重い。彼らは臨時国会の早期召集を声高に要求してきたが、その目的は果たして国益のためだろうか。旧統一教会問題や国葬問題で政府を追い詰め、政権にダメージを与えることだけが目的化していないか。
もちろん、旧統一教会と政治の癒着は徹底的に解明されなければならない。しかし、それが国会審議のすべてであってはならない。喫緊の課題である経済再生や安全保障といった、国民の生命と財産に直結するテーマについて、建設的な対案を示し、政府と論戦を交わすことこそ、野党に課せられた本来の責務であるはずだ。
スキャンダル追及に明け暮れ、国政を意図的に停滞させる様は、もはや単なるサボタージュであり、国民への背信行為だ。彼らが本当に国民の生活を案じているのであれば、政局的な駆け引きに終始するのではなく、一つでも具体的な政策を実現するために汗をかくべきだろう。
国会とは、政争の場である前に、国家の未来を論じる厳粛な場である。政府は説明責任から逃げることなく、強い意志をもって国政を前に進めるべきだ。そして野党は、批判のための批判を繰り返し、審議を空転させるだけの存在から脱却し、責任ある政策提言を行うべきである。
今回の臨時国会召集断念は、政府の弱腰と野党の無責任さがもたらした、我が国の議会制民主主義の危機的状況を象徴している。政治家たちは、目先の政局ではなく、国家百年の計を見据えた議論を戦わせよ。国民が求めているのは、下らない揚げ足取りや時間稼ぎではなく、この国をどう守り、どう発展させていくのかという、骨太の議論なのである。
————-
ソース