前文
近年、顧客等から事業者又はその労働者に対して行われる著しい迷惑行為、いわゆるカスタマーハラスメントが社会的な問題となっている。カスタマーハラスメントは、労働者の尊厳を傷つけ、心身の健康に悪影響を及ぼし、安心して働くことができる環境を脅かすものである。また、事業者の円滑な事業活動を妨げ、提供される商品及びサービスの質の低下を招き、ひいては地域社会の健全な発展にも影響を与えかねない。
[対象自治体名]は、すべての人が互いに尊重し合い、誰もが安心して働き、事業を営み、そして生活することができる地域社会の実現を目指す。このためには、カスタマーハラスメントは個々の事業者のみならず、社会全体で取り組むべき課題であるとの認識に立ち、その防止に向けて実効性のある対策を講じる必要がある。ここに、[対象自治体名]、事業者、労働者及び顧客等が一体となってカスタマーハラスメントの防止を推進し、もって労働者の就業環境の整備、事業者の安定した事業活動の継続、並びに市民生活の充実及び地域経済の健全な発展に寄与するため、この条例を制定する。
第1章 総則
第1条 (目的)
この条例は、カスタマーハラスメントの防止に関し、基本理念を定め、市(町/村)(以下「本市(町/村)」という。)、事業者、労働者及び顧客等の責務を明らかにするとともに、カスタマーハラスメントの防止に関する施策の基本となる事項等を定めることにより、カスタマーハラスメントのない社会を実現し、もって労働者が安全かつ健康に働くことができる就業環境の整備、事業者の安定した事業活動の継続、並びに市民生活の充実及び地域経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
- 【逐条解説】 本条は、条例の目的を定める。桑名市条例第1条 13、群馬県条例第1条 14、嬬恋村条例第1条 15 等を参考に、カスハラ防止を通じて達成すべき広範な公益(労働環境整備、事業継続、市民生活・地域経済の発展)を掲げている。
第2条 (定義)
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) カスタマーハラスメント 顧客等による、その要求の内容又は当該要求を実現するための手段若しくは態様が社会通念に照らして不当であり、これにより労働者の就業環境が著しく害される行為をいう。
(2) 事業者 本市(町/村)の区域内において事業(営利を目的とする事業であるか否かを問わない。)を行う法人(国の機関、地方公共団体その他の公共団体を含む。)及び個人をいう。
(3) 労働者 事業者に使用される者(雇用契約の形態を問わない。)及び事業者の指揮監督の下に業務に従事する者(ボランティア活動を行う者を含む。)であって、本市(町/村)の区域内において業務に従事するものをいう。事業者の事業に関連し、本市(町/村)の区域外で業務に従事する者も含むことができる。
(4) 顧客等 事業者から商品若しくはサービスの提供を受ける者若しくは受けようとする者又は事業者の業務に密接に関連する者をいう。
- 【逐条解説】
- (1) カスタマーハラスメントの定義は、厚生労働省の考え方 5、東京都条例の定義 6、民間企業の先進的な方針 46 等を総合的に勘案し、①要求内容の不当性、②手段・態様の不当性、③就業環境の悪化の3要素を包含するものとした。具体例は、第3章の事業者の措置や、市(町/村)が策定する指針等で示すことを想定している。
- (2) 事業者の定義は、東京都条例 6 を参考に、国の機関や公共団体も含む広範なものとした。
- (3) 労働者の定義は、雇用形態を問わず、実質的に事業者の指揮監督下で働く者を広く含める趣旨である。ボランティア等も保護対象となり得ることを示唆する。東京都条例 6 を参考に、市(町/村)外での業務従事者も状況により含める余地を残した。
- (4) 顧客等の定義は、現にサービスを受けている者だけでなく、潜在的な利用者や業務関連者も含む広義のものとした。東京都条例 6 を参考にした。
第3条 (基本理念)
カスタマーハラスメントの防止は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
(1) 労働者の人格及び尊厳が不当に侵害されることのないよう、労働者が安全かつ健康に働くことができる就業環境が確保されること。
(2) 顧客等と事業者及び労働者とが、対等な立場において相互に人格及び個性を尊重し合うこと。
(3) カスタマーハラスメントの防止に関する取組は、本市(町/村)、事業者、労働者及び顧客等がそれぞれの役割を認識し、相互に連携し、及び協力して推進されること。
(4) カスタマーハラスメントの防止に当たっては、顧客等の正当な権利及び利益を不当に侵害しないよう留意すること。
- 【逐条解説】 本条は、条例全体の指導原則となる基本理念を定める。東京都条例の基本理念 6、群馬県条例の基本理念 14、嬬恋村条例の基本理念 15、及び「顧客と労働者は対等な立場」という考え方 4 を参考に、労働者の保護、相互尊重、共同責任、顧客等の権利への配慮を柱とした。
第4条 (カスタマーハラスメントの禁止)
何人も、あらゆる場において、カスタマーハラスメントを行ってはならない。
- 【逐条解説】 本条は、カスタマーハラスメントを一律に禁止する規定である。東京都条例第4条 6、北海道条例第4条 12、桑名市条例第3条 13、群馬県条例第3条 14 等、多くの先行条例が同様の禁止規定を置いている。これは、カスハラが許されない行為であるという社会規範を確立することを目的とする。
第2章 各主体の責務
第5条 (市(町/村)の責務)
本市(町/村)は、前2条に定める基本理念にのっとり、カスタマーハラスメントの防止に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
2 本市(町/村)は、前項の施策の策定及び実施に当たっては、国、他の地方公共団体、関係団体及び事業者と連携するよう努めるものとする。
- 【逐条解説】 本条は、市(町/村)の基本的な責務を定める。東京都条例 6、桑名市条例第4条 13、群馬県条例 14 等を参考に、施策の総合的策定・実施と関係機関との連携を規定した。具体的な施策内容は第5章で定める。
第6条 (事業者の責務)
事業者は、第3条に定める基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たり、カスタマーハラスメントの防止のために必要な措置を講ずるとともに、カスタマーハラスメントの発生に起因する問題(以下「カスタマーハラスメント問題」という。)が生じた場合には、その雇用し、又はその指揮監督の下に業務に従事させる労働者(以下「従業者」という。)に対し、適切かつ迅速に対応する責務を有する。
2 事業者は、本市(町/村)が実施するカスタマーハラスメントの防止に関する施策に協力するよう努めなければならない。
3 事業者は、その従業者が顧客等として他の事業者に対してカスタマーハラスメントを行わないよう、必要な啓発その他の措置を講ずるよう努めるものとする。
- 【逐条解説】 本条は、事業者の責務を定める。国際的な潮流(英国 20、カナダ 26、オーストラリア 30 等)を踏まえ、カスハラ防止の主たる責任を事業者に課すことを明確にした。第1項で、予防措置と発生時の対応義務を規定。第2項で市(町/村)の施策への協力(努力義務)、第3項で従業者が加害者とならないための措置(努力義務)を規定した。東京都条例 6、神奈川県の資料 5、群馬県条例 14、嬬恋村条例第6条 15 等を参考にした。具体的な措置内容は第3章及び第4章で定める。
第7条 (労働者の責務)
労働者は、第3条に定める基本理念にのっとり、カスタマーハラスメント問題に対する関心と理解を深めるとともに、顧客等に対し、その権利を尊重し、誠実かつ公正に対応するよう努めなければならない。
2 労働者は、事業者がこの条例に基づき講ずる措置に協力するよう努めるものとする。
- 【逐条解説】 本条は、労働者の努力義務を定める。東京都条例 6、群馬県条例 14、嬬恋村条例 15 等を参考に、問題への理解、顧客への誠実な対応、事業者の措置への協力を規定した。
第8条 (顧客等の責務)
顧客等は、第3条に定める基本理念にのっとり、カスタマーハラスメント問題に対する関心と理解を深めるとともに、事業者及び労働者に対し、その人格を尊重し、カスタマーハラスメントを行わないよう、その言動に必要な注意を払うよう努めなければならない。
2 顧客等は、本市(町/村)及び事業者が実施するカスタマーハラスメントの防止に関する啓発活動等に協力するよう努めるものとする。
- 【逐条解説】 本条は、顧客等の努力義務を定める。東京都条例 3、群馬県条例 14、嬬恋村条例第5条 15 等を参考に、問題への理解、労働者への配慮、啓発活動への協力を規定した。
第3章 事業者による予防措置等
第9条 (方針の策定及び周知等)
事業者は、カスタマーハラスメントの防止のため、次に掲げる事項を内容とする方針を策定し、これを労働者に周知するとともに、事業所の見やすい場所に掲示する等の方法により、顧客等に対しても明らかにするよう努めなければならない。
(1) カスタマーハラスメントを行ってはならない旨の方針
(2) カスタマーハラスメントの内容及びその具体例
(3) カスタマーハラスメントに関する相談及び苦情への対応に関する事項
(4) カスタマーハラスメントが生じた場合の対応に関する事項
(5) その他カスタマーハラスメントの防止に関し必要な事項
- 【逐条解説】 本条は、事業者が策定・周知すべきカスハラ防止方針の内容を具体的に定める。神奈川県の資料 5、東京都の指針 45、民間企業の方針例 46 を参考に、方針に盛り込むべき必須事項を列挙した。顧客等への公表は努力義務としたが、抑止効果の観点から推奨される。
第10条 (教育及び研修)
事業者は、その雇用する労働者に対し、カスタマーハラスメントの防止に関する意識の啓発並びに知識及び理解を深めるための教育及び研修を、定期的かつ継続的に実施しなければならない。
2 前項の教育及び研修には、次に掲げる事項を含むものとする。
(1) カスタマーハラスメントに関する法令及び前条の方針の内容
(2) カスタマーハラスメントの発生原因及び背景
(3) カスタマーハラスメントが労働者、事業者及び社会に与える影響
(4) カスタマーハラスメントの被害を受けた場合又は見聞きした場合の相談及び報告の方法
(5) カスタマーハラスメントの発生時における適切な対応方法(初期対応、緊張緩和技術を含む。)
(6) その他カスタマーハラスメントの防止に必要な事項
3 事業者は、管理監督的地位にある労働者に対し、前項各号に掲げる事項に加え、カスタマーハラスメントに関する相談及び苦情への対応、事後の迅速かつ適切な措置、再発防止策等に関する教育及び研修を実施しなければならない。
- 【逐条解説】 本条は、事業者による教育・研修の実施義務を定める。神奈川県の資料 5、東京都の指針 45、国際的なベストプラクティス 19 を踏まえ、全従業員への定期研修と、管理監督者への追加研修を義務付けた。研修内容の具体例も示し、実効性を高めることを意図している。ディエスカレーション技術の重要性も示唆している 50。
第11条 (相談体制の整備等)
事業者は、カスタマーハラスメントに関する労働者からの相談(苦情を含む。以下同じ。)に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制を整備しなければならない。
2 前項の体制の整備に当たっては、次に掲げる措置を講ずるものとする。
(1) 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
(2) 相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
(3) 相談した労働者及び相談に係る事実関係の確認に協力した労働者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に周知すること。
(4) 相談したこと、相談に係る事実関係の確認に協力したこと等を理由として、労働者が解雇その他不利益な取扱いを受けない旨を定め、労働者に周知し、及び啓発すること。
- 【逐条解説】 本条は、事業者による相談体制の整備義務を定める。神奈川県の資料 5、東京都の指針 45、ILOの指針 55、EEOCのプラクティス 48 等を参考に、相談窓口の設置、担当者の対応能力確保、プライバシー保護、不利益取扱いの禁止を規定した。
第12条 (その他の予防措置)
事業者は、前3条に定めるもののほか、その事業所の実情に応じ、次に掲げる措置その他のカスタマーハラスメントの防止のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(1) 労働者の就業環境がカスタマーハラスメントを誘発しないよう、業務体制の整備、職場環境の改善等を行うこと。
(2) カスタマーハラスメントの防止に資する旨の情報を顧客等に対し提供し、又は啓発すること。
(3) 防犯カメラ、録音装置、非常通報装置その他カスタマーハラスメントの防止及び発生時の対応に資する設備を設置し、又は機器を導入すること。
- 【逐条解説】 本条は、その他の予防措置について事業者の努力義務を定める。職場環境改善、顧客への啓発 8、防犯設備等の導入 8 など、事業所の実情に応じて多様な措置が考えられることを示す。
第4章 カスタマーハラスメント発生時の対応
第13条 (発生時の措置)
事業者は、その雇用する労働者からカスタマーハラスメントの相談があった場合、又はカスタマーハラスメントが発生したと認める場合は、速やかに、かつ、適切に次に掲げる措置を講じなければならない。
(1) 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
(2) 前号の確認によりカスタマーハラスメントの事実が確認できた場合においては、被害を受けた労働者(以下「被害労働者」という。)に対する配慮のための措置(次条に規定する措置をいう。)を講ずること。
(3) 第1号の確認によりカスタマーハラスメントの事実が確認できた場合においては、行為者に対する対応(行為の中止要求、サービスの提供拒否、退去要求、警察への通報等を含む。)及び再発防止に向けた措置を講ずること。
(4) 事実関係の確認が困難な場合又はカスタマーハラスメントの事実が確認できなかった場合においても、必要に応じて、労働者の就業環境の改善及び再発防止のための措置を講ずること。
- 【逐条解説】 本条は、カスハラ発生時の事業者の対応義務を定める。神奈川県の資料 5、東京都の指針 45、民間企業の方針例 46、EEOCのガイダンス 38 等を参考に、事実確認、被害者配慮、行為者対応、再発防止を柱とした。事実確認が困難な場合でも、職場環境改善等の努力を求めることで、予防的な観点を加えている。
第14条 (被害労働者への支援)
事業者は、被害労働者に対し、その状況に応じて、次に掲げる支援その他の必要な措置を講じなければならない。
(1) 被害労働者の精神的及び身体的な健康状態に配慮し、必要に応じて、医療機関の受診、カウンセリングの機会の提供その他の支援を行うこと。
(2) 被害労働者の就業環境が改善されるよう、業務内容の変更、配置転換、休暇の取得その他の必要な就業上の配慮を行うこと。
(3) 被害労働者がカスタマーハラスメントの行為者から更なる被害を受けることを防止するための措置を講ずること。
- 【逐条解説】 本条は、被害労働者への具体的な支援措置を事業者に義務付ける。神奈川県の資料 5、嬬恋村条例第6条2項 15、東京都の考え方 7、アルバータ州OHS法 26、東京都の指針 45、EUのガイドライン 19 等を参考に、メンタルヘルスケア、就業上の配慮、二次被害防止を規定した。
第5章 市(町/村)による施策の推進
第15条 (情報の提供及び助言等)
本市(町/村)は、事業者、労働者及び市民に対し、カスタマーハラスメントの防止に関する必要な情報の提供、相談、助言その他の支援を行うものとする。
- 【逐条解説】 本条は、市(町/村)による情報提供・相談支援等を定める。東京都条例 6、群馬県条例 14 等を参考にした。
第16条 (意識啓発及び教育)
本市(町/村)は、カスタマーハラスメント問題に関する事業者、労働者及び市民の関心と理解を深め、カスタマーハラスメントの防止に関する意識の醸成を図るため、広報活動、研修機会の提供その他の必要な啓発及び教育を行うものとする。
- 【逐条解説】 本条は、市(町/村)による意識啓発・教育活動を定める。東京都条例 6、群馬県条例 14、嬬恋村条例第4条 15 等を参考にした。
第17条 (情報の収集、分析及び活用)
本市(町/村)は、カスタマーハラスメントの発生状況、防止対策の実施状況及び効果等に関する情報を収集し、分析するとともに、その結果を施策の企画及び立案並びに実施に活用するものとする。
- 【逐条解説】 本条は、市(町/村)による情報収集・分析・活用を定める。神奈川県の資料 5、東京都の指針 45、EEOCのプラクティス 48、英国FCAの事例 63 等、データに基づく政策改善の重要性を踏まえた。
第18条 (関係機関等との連携)
本市(町/村)は、カスタマーハラスメントの防止に関する施策を効果的に推進するため、国、他の地方公共団体、警察、労働基準監督署、法務局、業界団体、労働団体その他の関係機関及び団体との連携及び協力を図るものとする。
- 【逐条解説】 本条は、市(町/村)と関係機関との連携協力を定める。東京都条例 6 や航空業界の事例 57 等を参考に、多機関連携の重要性を強調した。
第6章 指導、勧告その他の措置
第19条 (指導及び助言)
市長(町長/村長)は、この条例の施行に必要な限度において、事業者に対し、カスタマーハラスメントの防止及びその発生時の対応に関し必要な指導及び助言を行うことができる。
- 【逐条解説】 本条は、行政指導の一般的な権限として、市長等による指導・助言を規定する。
第20条 (勧告)
市長(町長/村長)は、事業者が正当な理由なく第6条第1項に規定する責務(第9条から第11条まで、第13条及び第14条に規定する措置に係るものに限る。)を履行していないと認めるときは、当該事業者に対し、期限を定めて、必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。
- 【逐条解説】 本条は、指導・助言に従わない事業者に対する勧告権限を定める。対象となる義務を、事業者の責務の中核的部分(方針策定、研修、相談体制整備、発生時対応、被害者支援)に限定し、比例原則に配慮した。
第21条 (公表)
市長(町長/村長)は、前条の規定による勧告を受けた事業者が、正当な理由なく、当該勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
2 市長(町長/村長)は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、当該事業者にその理由を通知し、意見を述べ、及び有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
- 【逐条解説】 本条は、勧告に従わない事業者に対する公表制度を定める。公表は事業者の評判に影響を与えるため、最後の手段として位置づけ、適正手続(事前通知、意見聴取)を保障する。
第22条 (過料)
市長(町長/村長)は、事業者が正当な理由なく第20条の規定による勧告に従わず、かつ、第9条第1項、第10条第1項若しくは第3項、又は第11条第1項に規定する義務を著しく怠っていると認めるときは、当該事業者に対し、5万円以下の過料に処する旨を、理由を付して通知することができる。
2 前項の過料については、地方自治法(昭和22年法律第67号)の定めるところによる。
- 【逐条解説】 本条は、条例の実効性確保のための手段として、行政上の秩序罰である過料を導入することを提案する。対象は、勧告に従わず、かつ、条例が定める中核的な義務(方針策定、研修実施、相談体制整備)を著しく怠った事業者に限定する。過料の導入は、地方自治法第14条第3項 17 を根拠とするが、その適用範囲や法的妥当性については慎重な検討が必要である 16。大阪府の条例案がカスハラ行為者への罰金(刑事罰)を検討しているのとは異なり 8、これは事業者の条例上の義務不履行に対する行政上の措置である。
第7章 雑則
第23条 (プライバシーの保護)
この条例の運用に当たっては、関係者のプライバシーを尊重し、個人情報の保護に十分配慮しなければならない。
- 【逐条解説】 本条は、プライバシー保護の重要性を規定する。神奈川県の資料 5、東京都の指針 45、ILO条約 18 等を参考にした。
第24条 (不利益取扱いの禁止)
事業者は、労働者がこの条例に基づき相談若しくは報告をし、又は市(町/村)若しくは事業者が行う調査等に協力したことを理由として、当該労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
- 【逐条解説】 本条は、相談・報告等を理由とする不利益取扱いの禁止を規定する。神奈川県の資料 5、東京都の指針 45、EEOCのプラクティス 48 等を参考にした。
第25条 (他の法令等との関係)
この条例の規定は、カスタマーハラスメントに関し、他の法律又はこれに基づく命令(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)を含む。)に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。
2 この条例の規定は、カスタマーハラスメントに該当する行為が、刑法(明治40年法律第45号)その他の法律の規定により処罰されることを妨げるものではない。
- 【逐条解説】 本条は、他の法令等との関係を整理する。国の法令が優先すること、及び本条例が刑法等の適用を排除するものではないことを明確にする。
第26条 (委任)
この条例の施行に関し必要な事項は、市長(町長/村長)が別に定める。
- 【逐条解説】 本条は、条例施行に必要な細目を規則等に委任する一般的な規定である。
第27条 (審議会等への諮問)
市長(町長/村長)は、この条例の運用に関する重要事項及びカスタマーハラスメントの防止に関する施策の策定及び実施に当たり、必要があると認めるときは、学識経験者、事業者団体代表者、労働者団体代表者、市民代表者等で構成する審議会その他の附属機関に諮問し、又はこれらの者の意見を聴くことができる。
- 【逐条解説】 本条は、条例運用や施策策定における専門的知見の活用や市民参加を促すため、任意で審議会等への諮問を可能とする規定である。桑名市条例の委員会規定 68 や審議会の一般的役割 69 を参考にした。
第28条 (条例の見直し)
本市(町/村)は、この条例の施行後5年以内を目途として、この条例の施行の状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、必要があると認めるときは、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
- 【逐条解説】 本条は、条例の定期的な見直し規定(サンセット条項またはレビュー条項)である。神奈川県の資料 5 や東京都の指針 45 等が示す継続的な改善の考え方を反映し、5年を目途とした見直しを規定した。
附則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において市長(町長/村長)が定める日から施行する。
(経過措置)
2 (必要に応じて経過措置を規定する。)
- 【逐条解説】 施行期日については、周知及び準備期間を考慮し、公布後6ヶ月以内とした。必要に応じて、事業者の義務履行に関する経過措置等を設けることが考えられる。