八潮デジタル改革で暮らしを豊かに

第6次八潮市総合計画(素案)に対する意見

本意見は、「第6次八潮市総合計画(素案)」(以下、本計画案)のさらなる充実を図り、八潮市が持続可能で魅力的な都市となることを目指して、建設的な視点からまとめたものです。以下の4つの観点から、改善に向けた提案を述べさせていただきます。

1.将来都市像の明確化と八潮の個性強化

本計画案が掲げる「住みやすさナンバー1のまち」という将来都市像(ビジョン)は、すべての市民が誇りを持って暮らせることを目指す、非常に意欲的な目標です。このビジョンは、八潮市の幅広い魅力を反映していますが、すべての市民を対象とし、あらゆる分野を網羅しようとする「総花的アプローチ」は、結果として限られた行政資源を分散させ、どの分野でも施策の効果が薄まる可能性があると感じます。他の成功している自治体では、明確なターゲット層と価値提案により、都市の個性を際立たせています。例えば、流山市は「母になるなら、流山市。父になるなら、流山市。」というブランドで子育て世代を引きつけ、守谷市は高所得層向けに緑豊かな住環境を提供しています。川崎市はスタートアップや研究者をターゲットにイノベーション都市を構築しています。以下の表は、八潮市と他市のビジョン比較です。

戦略なきビジョンは、効果の薄い施策の乱発と、目に見えやすいインフラ投資への安易な依存を招き、次項で述べる深刻な財政危機を構造的に生み出しています。八潮市が、熾烈な自治体間の住民獲得競争の中で「選ばれるまち」となるためには、この曖昧なビジョンを見直し、客観的なSWOT分析に基づき、独自の強みを活かした明確な戦略を再構築することが不可欠だと考えます。

提案:

  • SWOT分析を実施し、八潮市の強み(例:立地、自然環境)を明確化。機会に対して強みを活かし、弱みを強みに変える発想を。
  • 特定のターゲット層(例:子育て世代、テレワークを行う専門職)に焦点を当てたビジョンを策定。
  • 資源の選択と集中を図り、限られた予算で最大の効果を上げる施策を展開。

2.財政健全化に向けた具体策の強化

八潮市の財政状況は、将来負担比率が53.5%で埼玉県内ワースト1位、実質公債費比率が7.4%、地方債借入額は243.6億円に急増、公債費(元本+利息の返済額)は毎年27億円前後と、厳しい状況にあります。新庁舎建設(事業費88.7億円)や土地区画整理事業(例:八潮南部東一体型特定事業、事業費441.4億円、進捗率62.8%)は、市民の利便性向上に寄与する一方で、財政負担を増大させています。以下の表は、県内の財政指標比較です。

本計画案では「健全で計画的な財政運営」を目指すとされていますが、具体的な債務削減策や優先順位の見直しが不足しているように感じます。早期健全化基準を下回れば安全だから良い、という考えが根底にあるのであれば、今すぐその考え方を捨てるべきです。将来負担比率が埼玉県内でワースト1位というのは、八潮市の対外的な信用力を失墜させる深刻な状況であり、将来世代に過大な負担を押し付ける姿勢は、市民からの信用を損ないかねません。

提案:

  • 地方債ではなく、新たな歳入ありきで大規模プロジェクトを計画。
  • 大規模プロジェクトの費用対効果を再評価し、優先順位を明確化。
  • 企業誘致や観光振興、広告収入、ふるさと納税などによる税収増加策を計画に明記。
  • デジタル化による行政コスト削減を推進し、財政基盤を強化。

3.成果重視のKPIと大胆な目標設定

本計画案のKPIは、「食育の実施回数」や「体操教室参加者数」など、行政が「何をしたか(活動量)」を測るプロセス指標に偏っており、市民が実感できる成果を測るインパクト指標が不足しています。これでは、真の課題解決に向けた進捗は評価できず、市民への説明責任を果たしているとは到底言えません。以下の表は、現行のKPIと、その見直しを提案する改善案の一例です。

さらに、設定された目標値の低さは、行政の「挑戦からの逃避」であり、成長を放棄していると言わざるを得ません。人口が増加する本市において、「子育て相談件数」や「観光入込客数」の7年間の目標が現状からほぼ変わらない(例:子育て相談室相談件数2,282件→2,310件、増加率0.17%)点は、挑戦的な姿勢が不足しているというだけではなく、実質的な市民サービスの切り捨てであると捉えられかねません。以下の表は、目標値の現状と課題です。

このような自己正当化のための評価制度では、PDCAサイクルは機能不全に陥り、市の停滞を招くだけです。市民が実感する効果を測定する、本質的なインパクト指標へと設定し直し、挑戦的な目標値に引き上げ、PDCAを有効に機能させることを強く求めます。

提案:

  • KPIを成果重視のインパクト指標に変更(例:要介護認定率の低下率)。
  • 目標値を大胆に引き上げ、PDCAサイクルを活用して継続的な改善を図る。
  • 市民意識調査を活用し、施策の効果を市民目線で評価。

4.デジタル化の遅れ解消と市民サービスの向上

国を挙げてDXが推進される中、八潮市の取り組みは近隣自治体から大きく遅れ、「デジタル敗戦」と呼ぶべき惨状を呈しています。以下の表は、近隣自治体との比較です。

市民の利便性に直結する「子育て・介護の26手続き」のオンライン化率については、100%を達成している自治体も多数ある中で、八潮市の8%(26手続き中、わずか2手続き)という達成率は、極めて低い水準です。RPAや外部人材の活用も未着手である点も、市民サービスの向上と行政効率化の観点で重要な課題です。

この危機的状況に対し、本計画案では「オンライン申請可能業務件数」を7年間で38件から100件に増やす目標を掲げていますが、7年後ですら他市の現状に遠く及ばない、周回遅れを容認するものです。また、本計画案にある「AI・RPAの利用、ペーパーレス化の推進」や、「オープンデータの推進」は、既存の行政業務をデジタルツールに置き換える「デジタイゼーション(Digitization)」または「デジタライゼーション(Digitalization)」に過ぎず、デジタル技術によって行政や社会のあり方そのものを変革する「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」には程遠いものです。DXの遅れは、市民の不便、行政の非効率、そして都市の競争力低下に直結する深刻な問題です。市長の強力なリーダーシップの下、DXを最重要課題と位置づけ、抜本的な改革を断行すべきです。

提案:

  • オンライン申請可能な業務を大幅に増やし、子育て・介護手続きのオンライン化率を100%に。
  • AIやRPAを早期に導入し、行政業務の自動化を推進。
  • DX専門家の招聘や民間企業との連携を強化し、最新技術を活用して真のDXを実現。

結語

以上、4つの観点から本計画案に対する意見を述べさせていただきました。八潮市が持続可能で魅力的な都市となるためには、明確なビジョン、財政の健全化、成果重視のKPI、デジタル化の推進が不可欠です。市の皆様のご努力に深く感謝しつつ、本意見が本計画案のさらなる充実に寄与することを心より願っております。

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